『 生意気年下女上司に懲罰を!【卑劣催眠】 』

作品情報
(くやしい、どうしてこんなクズに私が……)勤務中の給湯室、仁王立ちの足元にひざまずかせ、涙で美貌を歪ませる女上司の唇を侵す非道な口唇奉仕。顔と身体だけは極上の女を滅茶苦茶にしてやりたい――。快楽で支配する催眠姦で、弱者が才媛を玩ぶ絶対暴君に!暴走する悪魔の牙はもうひとりの上司、人妻の涼子へ!
基本情報
感想レビュー:屈折した悪意が生む、エロと笑いの交差点
大角やぎの官能小説『生意気年下女上司に懲罰を!【卑劣催眠】』は、一般的な催眠ものの枠を大きく超えた作品である。単なるエロティック・フィクションに留まらず、人生に行き詰まった男の破壊的な欲望、その対象となる女性たちの尊厳破壊、そして物語全体を貫く乾いた笑いと悲哀が複層的に編み込まれている。
催眠という名の絶望的な支配
本作は、自殺場所に選んだ廃寺で、命を代償に超常的な力を得た男が、勤務先の出版社を舞台に女上司たちを支配する様を描く。その強烈さは、従来の催眠ものとは一線を画している。スマートフォンで手軽に消費できる軽薄な催眠エロの文法を借りながらも、作者は最初から物語に不穏さを仕込む。呪いの対価として、この力は時間制限を持つ。そこから逆算される物語の緊張感は、単なる性的興奮では到達しない領域へ読者を導く。
主人公の暴力は、出版社という限定的な職場環境における微妙な権力構造と相まって、生々しさを増幅させる。給湯室での屈辱、職場での日常的な支配、そして人妻である涼子への侵襲——すべてが読者に不快感と共感を同時に与える。その矛盾した感覚こそが、本作の最大の特色となっている。
エロと笑い、そして悲哀の三層構造
本作を読むと、表面的には性的な快楽を求めているはずが、主人公のクズっぷりが徐々に際立つ。レビューでも指摘されるように、官能小説としてエロを求めて手にしたはずなのに、途中から主人公の人生的な破滅性、その生々しさへの笑いが混在し始める。モテない中年ヒラ社員が、呪いという非現実的な設定を得て初めて他者を支配できる快感——その根底に流れるのは、努力や修養では決して報われなかった人生への怨恨である。
作者・大角やぎの文体は、官能小説のテンプレートを逆手に取る。ロマンティックな愛情表現の代わりに、生殖的な身体性の露骨さ、言葉の奇妙さが際立つ。その独特の造語や文章のねじれが、一部の読者には「重みを感じられない」と映ったとしても、それが逆に作品全体の軽薄性と破壊性を増幅させているという逆説的な評価も存在する。
作品設定の問題性と物語的解釈
本作の舞台が「出版社」という現代的な職場環境であることは、二重の効果を生む。一方で荒唐無稽さを感じさせる舞台設定として機能し、同時に読者を現実へ引き戻す。ただし、この業界ネタが必ずしも全ての読者に響くわけではない。漫画出版業という限定的な背景設定が、物語全体の説得力を削ぐと感じる読者も存在する。
その一方で、本作の後半の展開は予想外の広がりを見せる。主人公が目的を達成した後、物語はむしろ深刻な破壊へ向かう。人生を破滅させる攻撃性がどこへ向かうのか——その乾いた結末が、エロティック・サスペンスとしての価値を高めている。
受け手を選ぶ作品だからこそ
本作は明確に読者を選ぶ。女性への歪んだ性欲を持つ者にとっては「ここでしか許されない」世界を提供する一方、女性嫌悪的な心理描写に不快感を覚える読者も少なくない。ただし、そうした違和感を含めて本作の魅力が成立している。オンプマークや造語を含む作者固有の文体は、その気持ち悪さをそのまま武器にしている。
フランス書院という官能小説の老舗レーベルが近年マンネリ化する中で、大角やぎの屈折したエネルギーは貴重である。作者のエロティックな想像力が枯れていない証拠として、本作は十分に迫力を持ちながら読ませる。賛否両論に分かれるのは当然で、その分裂こそが真摯な読書経験の証であろう。
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