『 ユーカリの花を求めて 』
感想レビュー
『ユーカリの花を求めて』は、“寝取らせ”という刺激的なテーマを用いながらも、単純な快楽や過激展開だけではない人間模様や心情描写の巧みさが際立つ作品です。私自身、最初は作者特有の「パワー系NTR」――力押しで相手を奪うような作風を想像していたのですが、本作は意外にも“静”の寝取らせから“動”の寝取りへと、時間をかけて段階的に関係性や心理を壊していく独特のダイナミズムに強く惹かれました。この静と動の対比、内向的なヒロインがじっくり堕ちていく描写の丁寧さに、エロだけでなく物語としての奥行きも十分感じられます。
他の読者レビューにも「パターン化している部分が残念」「どんな物語でも間役に既視感がある」などマンネリを指摘する声がありつつも、「予測を裏切る展開」「オープンエンドの余韻」「ヒロインの芯の強さ・節度」「一人称視点による“本心の不透明さ”」など、独自性や読後の余韻を高く評価するコメントも多く、多様な楽しみ方ができる点が光っています。
ストーリー自体は、主人公(千草)と恋人(華穂)が“倦怠感”をきっかけに寝取らせプレイに踏み切り、一度はふたりの関係が深まりつつも、やがて境界が壊れていく流れ。千草の「後戻りのチャンスが何度もあったのにあえて破滅へ向かう」弱さと欲望の分裂、見ているようで見えてこないヒロインと間男(阿藤先輩)の内心描写が、作品への没入感を高めています。とくに「回帰できる選択肢を持ちながら選ばない」「ヒロインが身体は先輩に奪われ、心は主人公と主張しつつ……」という状況や、読者に委ねられたラストの余韻は、多くのNTR作品にはない余白の美しさがあり、賛寄りの立場としてはむしろそこが最大の魅力ではないかと感じました。
一方で、「設定や台詞が毎回似ている」「道場破りで負けてセックス―展開が不自然」という厳しい否定的な意見や、「内向的ヒロインに似合わない淫語が興醒め」といった細部への不満も散見されました。こうした指摘も無理のないところで、全体として万人受けする作品ではないのは確かです。しかし、ヒロイン像や背徳感、パワーバランスの変化を好むNTR/NTR好きの読者からは「傑作」「バランスが良い」「ヒロインが魅力的」など高い評価が寄せられているのも事実です。
総じて、『ユーカリの花を求めて』は、「寝取らせもの」としての高水準なエロと、余白を残し余韻を楽しませるストーリーテリング、さらに“読むNTR”としての没入感――この3つが響く人には存分に刺さる一冊です。私は、こうした“どちらにも転べる不確定さ”と“堕ちきらないヒロインの芯”にこそ本作の真価があると感じています。一方で、シナリオの都合やパターンへの批判も真っ当に受け止めつつ、全体的には賛の立場からおすすめしたい作品だと思いました。
作品情報
僕が見たことのない表情を浮かべる彼女…
恋人の華穂と過ごす穏やかな日常に
少しの倦怠感を感じていた男子大学生、千草は
ふとしたことで「寝取らせ」に興味を持つ。
やがて、大切な恋人への罪悪感を感じつつも、
信頼のおける先輩、阿藤に華穂を抱かせるのだが――。
「私、知らないっ……ちー君は、こんな風にはっ……」
日常に密着したエロス、リアルな舞台設定で送る官能小説レーベル第200弾!
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