『 外務省ハレンチ物語 』
感想レビュー
『外務省ハレンチ物語』は、佐藤優による初の官能小説であり、ほぼ実話ベースで外務省の実態を暴くという強烈な一冊だ。読んでいてまず感じるのは、そのあまりのエゲツなさと笑えるほどの破廉恥ぶり――だが同時に、これは単なるエロ小説ではなく、外務省内部の腐敗や裏金の使い方、官僚の金銭感覚を知るための“告発書”としての側面を強く持っている。実際、作者もあとがきで「個人名以外はほぼ実話」と語っており、筋書きの荒唐無稽さに吹き出しつつも、「これ、本当なんじゃないか?」という背筋の寒くなる感覚が残る。
中には、外交官や政治家の醜態を「酒池肉林」として楽しむレビューもあれば、「性描写が濃厚すぎてファンとしては正直きつい」という声もある。特に20代女性視点の場面では、著者の顔写真を知っているがゆえに感情移入できず、気持ち悪さが勝ってしまうという批判もあった。一方で、初めは官能要素に戸惑ったものの、ロシア外交や諜報活動の描写、人物特定が可能な毒のあるユーモアに引き込まれ、最後まで一気読みしてしまったという好意的な評価も多い。
作品の根底には、霞が関の長年の不祥事文化――「自殺の大蔵、汚職の通産、不倫の外務」という言葉で表される官庁の体質――への批判が流れている。外務省の日常が、裏金で高級酒を揃え、職場で男女が抱き合うような宴会風景だという証言もあり、現役の外交官に会う目が変わったという読者もいる。こうした赤裸々な描写は、著者を貶めた人物への復讐劇という面もあって、知っている人にはより痛快に映るだろう。
「低レベルの破廉恥話」と切り捨てる読者もいれば、「怒りと笑いと知識が同居した奇書」と称える人もいる。自分としては、そのあからさまな描写と同時に、官僚組織の腐敗をコミカルかつ毒々しく描ききった筆力を評価したい。確かに万人に勧められる本ではないし、官能部分で引く人もいるだろうが、外務省の裏側に興味があるなら避けて通れない一冊だと思う。読後に湧くのは、「本当にここまで堕ちているのか」という驚きと、「やっぱりか…」という諦め、そして皮肉な笑いだ。
作品情報
ロシアマフィアを怒らせた代議士Kのド助平「海外政経事情調査」、「金髪ポルノ」で美人研修生に英語講習する首席事務官M、在外公館・女性家事補助員が見た「公使Aの裏金とSEXの罠」–。尖閣問題、朝鮮半島有事など外交有事の最前線で繰り返されているのは、実に呆れた破格の蓄財と性の宴だった。全篇、個人名を除いてほぼ実話、大宅賞作家にして最強外交官が描く初の小説!
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