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【感想レビュー】時代まつり

『 時代まつり 』

時代まつり

感想レビュー

京都の「まつり」を舞台に、多様な男女の心の機微と官能が交差する連作短編集。個人的には、舞台の京都がもたらす雅やかさと、そこに流れる妖しさが物語全体に深い陰影を与えていて、とても印象的だった。何気ない祭りの情景や、古都ならではの空気感が、ただの官能小説にとどまらず、登場人物たちの人生の苦みや切なさ、そして再会や別れの宿命性を際立たせている。

作品全体に漂うのは、表と裏、本音と建前を巧みに使い分けることでの「ズルさ」や「狡猾さ」というよりも、自分と他者の気持ちを尊重しながらも欲望を貫く、人間の生々しいリアリティだと感じた。短編一つ一つには、逢瀬、過去への執着、未練、葛藤といった多様な女性像や男の未熟さ、能天気さ、女の底知れなさがしっかり描かれており、京都好きならずとも物語世界へ没入しやすい。特に、女性の視点から描かれる性表現の瑞々しさは花房観音作品ならではで、読後に「ああ、京都に行きたい」と思わせるほど。

一方で、官能描写について「ややパターン化されていて飽きる」という声も見受けられた。同時に、それがエンディングや余韻を際立たせる狙いではないか、と考察している人もいた。また、切なさや哀しみが随所にあり、時には読んでいて辛くなる、という意見もあり、プラトニックな恋愛小説や純粋な官能小説とは一線を画す、花房観音作品らしい大人の情念が好みを分ける部分ともいえそう。

全体としては、「女性の立場での性表現が秀逸」「京都が好きな人にはたまらない」「物語が丁寧で短編集それぞれに深みがある」と、好意的なレビューが多数派。目新しさよりも雰囲気や情緒、余韻を重視した作風が好きな人には特におすすめだと思う。悪い点を挙げるとすれば、官能シーンのバリエーション不足と、情念の生々しさに対する好き嫌いくらい。ただ、それを上回る「京都」と「愛憎」の描き方の美しさが際立った一冊という総評になった。

3.8

作品情報

雅やかで妖しい古の都、京都。彷徨う魂を鎮めるかのように繰り広げられる数多の「まつり」。再び出会うことを運命づけられた人々は囃子に誘われる。男を裏切った祇園の元・舞妓、理不尽な理由で結ばれなかった男女、ふたりの女とひとりの男の奇妙な三角関係……。褥で交わされた睦言が情念と打算を駆り立てる。「京おんな」の怖さ、切なさ、狂おしさに満ちた極上の官能短編集。

※引用元:FANZA

サンプル

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